「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」解散と新たなスタートへ向けてのアピール
2007年2月8日
「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」呼びかけ人
大内裕和、小森陽一、高橋哲哉、三宅晶子
「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」呼びかけ人
大内裕和、小森陽一、高橋哲哉、三宅晶子
教育基本法改悪反対の市民ネットワーク「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」の解散が、2007年1月13日の会議で正式に決まりました。2004年4月24日に発足して以来約2年半の間、全国連絡会の運動に協力していただいたすべての皆さんに心から感謝申し上げます。
私たちの運動は、2003年8月に名古屋で行われた合宿から始まりました。教育基本法改悪に強い危機感をもっていた全国各地の市民・教職員らが集まり、「教育基本法の改悪を何としてもとめたい!」という熱い議論が2日間にわたって行われました。この合宿で「年内に教育基本法の改悪に反対する全国集会を行う」という方針が決定し、2003年12月23日に「教育基本法改悪反対!12・23全国集会」を東京の日比谷公会堂で行うこととなったのです。
私たちは集会直前まで会場が果たして埋まるのかという不安でいっぱいでしたが、会場定員をはるかに上回る4000名以上の参加者があり、12・23集会は大成功でした。この12・23集会の成功が、2004年4月の「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」発足の原動力となったのです。
この運動にはいくつかの成果と意義がありました。第一に、教育基本法の改悪反対の一点で組織・団体の枠を超えて幅広い連携をつくったということです。市民運動、教職員組合、労働組合など様々な運動体、さらにはどこにも所属していない人々が、一人ひとりの「教育基本法改悪を何としてもとめたい!」という願いを出発点として、これまでにないかたちでつながり、連帯の輪を広げていきました。教育基本法改悪反対の一点で幅広く連帯する「12・23方式」の集会が全国各地で行われ、また運動のネットワークがつくられました。
二点目は、教育現場の困難と向かい合い、そこで格闘する人々との連帯を何よりも重視してきたということです。私たち「呼びかけ人」はこの約3年半、全国各地を講演でまわり、現場教職員や保護者、市民、若い世代との交流を通して、現在の教育現場がいかなる困難を抱え込んでいるのかをあらためて知ることとなりました。「日の丸・君が代」強制、「愛国心」通知表、「ゆとり」教育のゆとりなき実態、学力テストや学校選択制、習熟度別指導による格差教育の強化など、教職員と子ども、保護者を追い込む「教育改革」が急速に進んでいます。私たちはこれらの問題と教育基本法改悪とのつながりを広く社会に訴えてきました。また12・23集会から計7回行った全国集会においても、教育現場での困難と格闘している当事者の発言を何よりも大切にしてきました。彼らの発言は、教育現場の現状を明るみに出すとともに、多くの人々の共感を呼ぶことによって、教育基本法改悪反対運動を盛り上げる大きな原動力となりました。
三点目は、若い人々が運動の場に新たに登場し、重要な役割を果たしたということです。彼らの登場は、教育基本法改悪反対運動に新鮮な息吹を持ち込み、運動を活性化させました。特に運動の後半においては、若い人々を中心とするデモ・パレードが行われるなど、彼ら独自のネットワークが拡大しました。「格差社会」が深刻化するなか、政治的・社会的課題に取り込むことがとりわけ困難な状況に追い込まれている若い人々が、教育基本法改悪反対運動を通して登場してきたことは大きな希望です。
「教育の憲法」とも呼ばれる「改正」前の教育基本法は、天皇制国家主義教育を支えた教育勅語を否定し、個人の尊厳と平和主義を基本理念としています。しかし「改正」後の教育基本法は、「伝統文化」や「愛国心」といった国家主義を教育現場に強制し、「教育の機会均等」を解体することで、子ども一人ひとりが平等に学ぶ権利を奪い、新自由主義によって生み出される「格差社会」を固定化しようとするものです。教育基本法「改正」とは改悪に他ならず、これによって教育現場は根底から変えられてしまう危険性があります。
しかし、状況は絶望的かというとそうではありません。教育基本法が改悪されたといっても、「教育を受ける権利」や「思想及び良心の自由」が明記された日本国憲法と「子どもの意見表明権」が明記された子どもの権利条約は健在です。改悪教育基本法によってそれらに違反する行為がなされた場合には、日本国憲法と子どもの権利条約に基く批判を行っていくことが可能です。何よりも、教育基本法改悪への反対を通して教育現場や全国各地で積み上げられてきた運動の力があります。この力を基礎として、これから改悪教育基本法を実体化させない闘いをつくっていくことが重要です。「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」がつくり出してきた組織・団体の枠を超えた幅広い連携、教育現場との結びつき、若い人々の登場は、これからの闘いにとって大きな意味をもつこととなるでしょう。
2007年の通常国会に改悪教育基本法を実効あらしめるための関連法案が提出され、教育における自由と平等を解体するための具体的な動きが始まります。さらに改悪教育基本法は自民党の新憲法草案との整合性をチェックしたとの伊吹文科相の発言からもわかるように、この次に憲法の改悪が狙われていることは間違いありません。
教育の自由と平等を獲得し、憲法改悪に反対する真の闘いはこれからです。教育基本法改悪反対の一点で集まった「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」はここで解散しますが、これは運動の「終わり」ではなく「新たなスタート」です。この運動を通して全国各地でつくられてきた連帯の輪をさらに広げていくことによって、改悪教育基本法の実体化と憲法改悪を阻止する闘いをつくって行きましょう。私たちもそれぞれの立場から「これからの闘い」へ向けて「新たなスタート」をきります。