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2006年09月30日

書評―『教育と国家』第二章 愛国新教育―私が何を愛するかは私が決める

続いて、第二章です。第三章以降の紹介もお願いしているので、原稿が届き次第、掲載します。


書評―『教育と国家』第二章 愛国新教育―私が何を愛するかは私が決める

【数学教師】

教育と国家教育と国家
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] 教育と国家
[著者] 高橋 哲哉
[種類] 新書
[発売日] 2004-10-19
[出版社] 講談社


<要旨>
 「2004年サッカー・アジアカップで中国からの日本バッシング、翌年中国、韓国での反日デモは記憶に新しい。中国、韓国では被害を強調しすぎる愛国教育が盛んで、反日感情を植え付けている」「一方で日本は愛国心という言葉にアレルギー反応を示しすぎである」などと耳にする。
 愛国心について、歴史的な文脈抜きでの議論は無意味である。日本の愛国心教育は明治時代に、国民を統合しようとした教育勅語から始まる。国のために命を投げ出せる日本人であることが愛国心の証明とされ、結果、日本人310万人、アジア諸国民2000万人の犠牲を出した。また、1950年代の主権回復以来、国家権力を担ってきたのは戦前・戦中と連続性の強い保守勢力であり、彼らはかつて国民精神動員に有効だった愛国心教育を復活させたいと考え、1950年代から教育基本法改正を主張し続けてきた。こうした文脈を踏まえれば、大きな被害を受けたアジア諸国が日本の愛国心教育に警戒するのは当然である。
 自分の属する共同体に「パトリオティズム」などの愛着を持つのは自然な感情である。一方、植民地支配から独立した地域を見れば、「ナショナリズム」さえ、独立のために解放的な役割を果たしたこともあった。仮に、敗戦国日本に対して日本語使用、日本語姓名の禁止などがおこなわれていたら、著者自身も独立運動をおこなう「愛国者」になった可能性もある。「小さな共同体へのパトリオティズムは平和なもの、近代国民国家のナショナリズムは悪」というのは単純化のしすぎで、共同体とは「我々」と他者の区別を内包するものであり、大きな共同体ほど排他的な面が強力になり、暴力性が高まるに過ぎない。何を愛するかや、どのような形の愛国心を持つことも、持たないことなどは本来最も自由な領域に属する。それを法律で規制することは暴力でしかない。教育基本法の「真理と正義を愛する」は、真理さえも犠牲にしてきた戦前・戦中の教育への反省という視点で見れば、画期的なことであった。
 「若者たちに社会や公共性に対する関心を喚起するべきで、そのために愛国心を育て、規律を教え込むことが必要だ」という意見がある。前半部分は一般にはもっともなことであるが、愛国心に至るには飛躍がありすぎる。さらに、ここで注意が必要なのは、明治から敗戦までは「公」が天皇を指しており、愛国心強制を図る人たちは、この特殊な「公共性」を指しているということである。これは3章を読む上でも重要な視点である。

<雑感>
 「戦前と戦後では、確かに法体系としては一変しているが行政・政策としては少なからず連続性がある」という視点が重要です(さらにはGHQ占領による断絶はある勢力にとってはないに等しいということが5章で論じられます)。「愛国心」の危険性と、愛国心をすべて悪とすることの無意味さを27ページにわたって論じています。2章だけでなく本書全体としても大きな比重を占めている重要な箇所です。まとめるために読み返すことにも結構な労力がかかったので、教育基本法改悪に反対する人すべてに理解してもらうとなると、かなり困難を伴うように思います。とはいえ、高橋氏が、「我々は今こそ日本国憲法を我々のものとして獲得し直さなければならない」と代々木公園で話していたことが思い出されます。教育基本法に関しても同じことなのだと気付かされました。
 「規律のために愛国心」については、9月21日の日の丸君が代強制違憲判決を受けての石原の反論を思い出します。「この裁判官は都立高校の実態を知っているのか。教師の話を聞いているのは前の2、3列。あとは弁当食べたり、おしゃべりしたり好き勝手」だそうです。このこと自体何校、何割の都立高校の実態だ??すべての授業でそうなのか??と思いましたが、「わがままをやめさせるために愛国心」という訳のわからない主張をする人が本当にいるんだとびっくりしたものです。
posted by あんころ at 15:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評
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